うまい棒の人気の作り方が秀逸。年間38億円のヒット商品になった理由

マーケティング

 

消費税、原材料が上がっても駄菓子は値上げしない!? 


こんにちは。じぇいです。

先日コンビニの前で、
小学生くらいの男の子が涙目で悶え苦しんでいて、
それを周りの友達が見て爆笑していました。 

何やってるんだろう?

と思い通り過ぎる瞬間ちらっと見てみたら、
涙目の男の子の右手には「わさびのり太郎」の袋が。
わさびのり太郎とかめちゃくちゃ懐かしいな~。

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僕が小さい頃も大量に買って、
みんなで何かゲームや勝負事をして、
負けた人がわさびのり太郎を一口で一気食いする。

 みたいなバカな事をやっていました。

このお菓子は小学生に
食わしちゃ駄目だろうというレベルの辛さで、
とんでもなくわさびの味が強いんですよ。

 口に含んだ瞬間にわさびの辛い味がツーンと鼻を刺激するんですよね。 

懐かしさから
あれを大人になった今やるとどうなるのかな?

というしょうもない好奇心から、
僕もコンビニによった次いでに
わさびのり太郎を買って
車の中で一気に食べたら…

コンビニ前にいた小学生と同じ状況になりました。

いくつになっても辛いものは辛いんですね。笑 

でも、僕が小さい頃も
今現在の小学生も同じ駄菓子を食べて、
同じような事をやっていると思うとなんか嬉しいですね。

 時代と共に様々なモノが変化する
と言われている時代ですが、
やはり良い物や人気のあるモノは
残り続けるという事を目の当たりにした気がします。
 

それで、

このお菓子を久しぶりに買ってみて思ったのですが、
わさびのり太郎に限らず駄菓子って、
全く値上がりしていないんですよね。

 例えば、
駄菓子の代表的存在である「うまい棒」なんて、
1979年に発売されて
その時からずっと10円を守り続けているんですよね。

 原材料のとうもろこしが値上がりしようと、

消費税が増税されようと、
どの時代もずーっと10円なんですよね。

これって物凄いと思いませんか?

だってマクドナルドのハンバーガーを
思い出してもらうとわかりやすいですが、
マクドナルドのハンバーガーが
一番安かった時は
1つ59円ですよ。

今現在は120円になってしまったので、
約2倍の価格になっています。

でも、駄菓子って
全く値上がりしないんですよね。

これは物凄い企業努力ですよね。 

そこで興味本位で
駄菓子について調べてみると、
とんでもない事がわかりました。

 うまい棒の売上は上場企業に匹敵する年間38億円!?


まず、駄菓子と言われたら何を想像しますか?

年代によって多少ばらつきが出ると思いますが、 
代表的なモノを言えば、

「うまい棒」

「蒲焼さん太郎」

「キャベツ太郎」

「BIGかつ」

 この辺りでしょうか。

まぁ、運動会とかの景品や、
小学生のときの遠足に買っていった駄菓子ですね。

あとは地域のイベント事で配られる
お菓子とかって
基本この辺りが多いと思います。

それでこの辺りの誰もが知っている駄菓子商品って、
株式会社やおきん」という会社が作っているんですね。

 この会社のホームページの商品カタログを見てみると

http://www.yaokin.co.jp/catalog2/index.html

 めちゃくちゃ懐かしい、
一度は食べたことがある駄菓子がずら~っと並んでいます。

小さいころ食べていてた駄菓子の大半がこの会社のモノなんですね。

この会社のマーケティングについて
調べてみると
めちゃくちゃマーケティングが上手い会社でした。

 最も驚愕したのが「うまい棒」が産み出す年間の利益です。

 僕の見立て的には、
うまい棒なんて、昔から1本10円だし、
昔に比べて原材料なんて高騰してるし、
コンビニやスーパーに置く分の
テナント代も掛かるから
ほぼほぼ利益なんて無い商品なんだろうなと思っていました。

しかし全然違いました。

そもそもうまい棒って1日どのくらい売れると思います?

ちょっと予想してみてください。

1万本?10万本?いや、100万本?

答えは、
140万本売れるらしいです!

1日ですよ。笑

年間計算すると約5億本。

つまり日本国民1人当たり
年間で4~5本のうまい棒を食べる計算になります。

まぁ平均値なので
そんなに食べていない人もいれば、
もっと食べている人もいるでしょうが。 

それくらい多くの人に食べれられている商品なんですね。

この数字は本当に驚愕です。

ヤバすぎます。

 もう少し詳しく調べてみると、
年間売り上げは144億。

卸値は7.5円です。

つまり、
うまい棒セグメントの年間売り上げは38億。

この飲食での38億円の売上って
いまいちわからないですかね。

わかりやすいところの例を出すなら、
上場会社の東京一番フーズ
「とらふぐ亭」の売上とほぼ同額です。
 

「うまい棒」の売上と「とらふぐ亭」の売上が同じなんですよ。

そのちょっと上で言うなら、
天ぷらで有名な「綱八」や「とり鉄」です。

いや~、たった10円の商品が
38億円売り上げているって驚きですよね。

ただこれはあくまで売上ベースの話で、
利益はそんなに出ていないだろう
とおもって計算してみると。。。

 粗利は1日200万以上出ていますね。

 そこから人件費や雑費を差し引いても
かなり利益は残るでしょうね。

粗利だけど年間5億ですからね。 1 

このドラえもんの親戚みたいな顔した
可愛らしいキャラクターは実は
相当やり手なビジネスマンだったんですね。

うまい棒が売れ続ける秀逸なマーケティング 


ただ、これで
「株式会社やおきんって凄いな!」と
終わってしまっては
何の意味も無いのでここからが本題。

 なんでこんなに「うまい棒」やその他の駄菓子が売れ続けているのか?

というところを分析してみたいと思います。

 まずうまい棒の起源を見てみると、
ヒットした理由がわかりました。

 うまい棒が発売されたのは1979年です。

この頃の駄菓子は
串イカやあられといった大きな容器に入って
バラで売られているものがメインでした。 3

 

この時代の一般的な駄菓子の
イメージと言えば
こんな感じだったのですが、

「うまい棒」はこれらの商品と差別化を測るために、
個包装したんですね。

個包装するとどんな効果があるかというと、
イベント事で配布し易いですよね。

例えば、何かイベント事での
参加賞とか景品で配布できますよね。

 これは個包装してるからで、
大きな容器にバラ売りされている駄菓子では出来ませんから。

あと、たった10円のお菓子に
個包装が入る事によって、
他の10円の駄菓子よりも高価に見えたりもします。

これはゲームカセットとか
CDを想像してもらうとわかりやすいですが、
ケースに何も入っていないCD1000円より、

CDケースにジャケットが付いている
CD1000円の方が
同じ1000円の商品でも
高価に見えるし得した気分になりますよね。
 

その他にもパッケージに味や原材料、
賞味期限を印字できるようにしたことで、
その後のシリーズ展開が考えられたんですね。

今では個包装なんて
当たり前の時代になっていますが、
当時はとても珍しかったわけです。 

この戦略が功を奏し、
イベント事で配る子供のお菓子=うまい棒
みたいなイメージを構築出来たのだと思います。

合わせ買いといえばうまい棒というブランディング


 あとは、主戦場を駄菓子屋から、
コンビニやスーパーにシフトしたのも上手い戦略ですね。 

やおきんの商品の何よりも魅力的なのが
10円という価格なわけですが、
この価格戦略にしたということは
「目的買い」より「ついで買い」で儲けているということです。

マーケティング用語では
ついで買いさせる商品のことを
クロスセル商品なんて言葉を使います。

 わかりやすい例を出すなら
「パソコン買った次いでにマウス如何ですか?」

という感じですね。

メインの目的買いに合わせて関連商品を売るわけです。

基本的にはクロスセル商品の特徴としては、
メインの商品が売れた次いでに
合わせ買いさせることによって
ちょっとでも売上げを大きくさせる戦略の商品です。 

つまり、このクロスセル商品では
大きく売り上げることは考えなく、
プラスアルファで少し儲かったら良いな
という商品なんですね。
 

先程のパソコンの例で考えてみれば、
パソコンを3万円で販売して、
3000円のマウスを次いでに買わせると、
本来、売上が3万円だったのを
3万3000円にするという程度なんです。
 

”塵も積もれば山となる”とは言うものの、
クロスセル商品をメインにして
商売というのは普通なら成り立たないわけです。 

だからこそ、他のライバルは10円ではなく、
30円や100円のお菓子を作って来たわけです。

でも株式会社やおきんは
ここに目を付けてクロスセル商品販売に徹底したんですね。

そうなるとうまい棒を買いに
わざわざスーパーやコンビニに来る人はいませんが、
コンビニで飲み物を買った、
スーパーで夕飯の食材を買った。
 

その次いでに10円のお菓子なら
5本買ったとしても50円だから
子供にお菓子を買っていこう。

と、次いでに買わせる事が出来ているわけです。 

これが50円のお菓子だったら、
2つ買えば100円です。

 普段どこの商品が安いとか、
広告を見定めてどのお店が安いとか見ている
主婦にとっての100円の出費は痛いですよね。

 「それなら2つ買わなきゃ良いじゃん」

と思うかもしれませんが、
子供が二人居たら、
お菓子1つでは絶対喧嘩になりますからね。
 

こうした結果、
他のクロスセル商品を
一切寄せ付けない状況を作り出し、
10円のうまい棒だけを売りまくって
年間で38億円稼いでいるわけです。
 

クロスセルだけで勝負する
マーケティングなんて
普通やろうとしません。

しかし、そこに目をつけて
突き抜けてしまうと
こうまでも上手く行くんですね。

僕も良い勉強になりました。

子供にヒットした理由は大人への背伸び感の演出!?


 あとは子供目線で見てみても、
売れる理由がわかります。

 それは多種多様な味を用意したということです。

うまい棒はいろいろ入れ替わりはあるものの、
常時15種類前後の味が出回っているそうです。

15種類も味が用意されているということは、
子供ながらに選択肢を持てるわけです。

例えば同じうまい棒を買うにしても、 
「やっぱり明太子味だよな」
と共感し合うこともできれば、

 「えっ!?なっとう味好きなの!」

 みたいな感じで意見交換できて、
個性を主張し合ったりできるんですよね。

意見交換して行くと、
他人が食べている味が今度は欲しくなり、
次買う時は新しい味でも買ってみよう!

と、他の商品ではなく同じ商品の違う味に購入意欲が湧くわけですね。 

更に言うなら
うまい棒の一番人気と言えば、
「明太子味」らしいですね。

明太子味を世に出した理由も非常に面白くて、
今でこそお菓子で時々ありますが、
普通に考えたら、『駄菓子×明太子』って
合わなさそうじゃないですか?

 この明太子味を発売した理由が
本当に秀逸なマーケティングだなと感じました。

この明太子味の発売されたのが
1982年なんです。

この頃ってまだ全国的に見ても
明太子がまだ一般家庭に馴染みのないときなんですよ。 

だから、子供が明太子を食べるなんて
状況はあり得なかったわけです。

一部の大人が食べる大人の食べ物。
という認識でした。

そんな状況を見て作ったのが
うまい棒明太子味です。

これによって、
明太子を子供でも体験できるようになったわけです。

 僕は久しく明太子味のうまい棒を
食べていないので
本当に明太子の味をしたかは定かではありませんが、

当時の子どもたちは、 

「へぇ~これが明太子の味か!!」

 という大人が好んで食べる、
ちょっとした贅沢品の食べ物を
自分たちも食べれている
という背伸び感を演出したのだと思います。
 

他にもうまい棒だけ見ても
いろいろ計算されて作られていて、
とてもおもしろい会社だなと感じました。 

最近は駄菓子とITを掛け合わせて、
何か新しい展開を考えているみたいですね。

一見関係なさそうな、
他分野のジャンルを掛け合わせる考え方は大切ですね。

コンビニの前で見た
わさびのり太郎の少年から
こんなにも話が発展するとは思いませんでした。 

クロスセルをメイン事業にしたり、
意見合わなさそうな組み合わせをヒットさせたり、
ITと駄菓子を組み合わせたり、
常識に囚われない発想が楽しいですね。

 いろいろ参考にして、
常に自分のビジネスと掛け合わせて考えて、
どこかしら取り入れられないか考えてみると、
またそこから新しい発想が生まれたりすると思います。