ヒットしても赤字になる映画マーケティング
こんばんは。じぇいです。
今年最もヒットした映画といえば
「君の名は。」ですね。
観客動員数は1500万人突破しており、
僕の周りの人は大体見ていましたね。
時々こういった流行り物を極端に嫌う人がいますが、
流行り物を抑えて置くと困ったときの話題として使えるので
極力流行った映画は抑えて置くと良いですよ。
例えば、
自分より明らかに若い人、
自分より明らかに年上な人など。
ジェネレーションギャップや
環境があまりにも違う相手と話す時って、
話題が無くて困る事がありませんか?
でもそんなときは
流行った映画の話題なら
どんな相手でも大体使えるので会話に困る事が無くなります。
映画ってそれぞれの感想があり、
その感想に同意する部分もあれば、
感想を言い合ってディスカッションしたりできますね。
感想には基本的には正解がないので、
知識レベルに差があったり
ジェネレーションギャップなどがあっても
共通の話題として盛り上がる事が出来るんですよね。
さて、
そんな大ヒットした「君の名は。」なんですが、
興行収入200億円を超えらしいですね。
邦画の歴代興行収入で言えば2位になったそうです。
この興行収入200億円超えって
歴代興行収入1位の
「千と千尋の神隠し」以来15年振りだそうです。
ちなみに「千と千尋の神隠し」は
興行収入308億円です。
この良くニュースや記事で耳にする
”興行収入”という言葉、
意外と多くの人がわかっていないんですよね。
時々、興行収入=製作会社が儲けた利益
だと勘違いしているみたいですが、
それは大きな間違いですからね。
興行収入とは、ただ入場料を総計した数字ですからね。
ということで、今日は
映画マーケティングについて解説したいと思います。
目次
映画がヒットしなければ責任はマーケッター!?
そもそも映画って物凄くお金がかかるのに
どうやって資金調達しているの?
物凄くお金がかかるって具体的にどんな事にお金を使っているの?
大ヒットしたって言うけれど、
実際どのくらい稼げるの?
これらの事って
知っているようで意外と知らないですよね。
そんな映画業界の仕組みについてお話していきます。
まず、勘違いされがちなのが、
映画監督というのはあくまで映画を作るのが仕事です。
つまり、
どうやって映画を宣伝するとか、
広告費をいくらかけるのか、
話題性を作るとか、
これらの仕事は基本的には監督の仕事ではなくて、
マーケッターと呼ばれる人が行うわけです。
映画の本場ハリウッドなんかでは、
映画がヒットしないと
マーケティングのせいだと言われたり、
時にはクビにされたりする程
実は物凄く重要な仕事なんですね。
だから映画マーケティングをする
マーケッターの力が強い映画は、
こんな現象が起きたりします。
それは、
「公開前に面白そうな映画だと思ったけど
実際見てみたらつまらなかった。」
ということです。
あなたもそんな経験ありませんか?
これは、映画が面白くて観客を集めているのではありません。
映画を面白そうに魅せるマーケッターの力によって
観客が集まっているという状態ですね。
映画を見るまでは物凄く興味津々で
わくわくしながら行ったのに、
実際に見ると期待を大きく下回って来た。
みたいな。
マーケティング力があるが、
内容がつまらない映画って
映画公開から初動は物凄く、観客を動員するのですが、
どんどん口コミで
「あの映画面白そうに見えるだけ」
とか、
SNSで
「あの映画つまらなかったな」
と広がっていくので、
初動の動員数からどんどん落ちていくわけです。
つまり、
映画って内容がつまらなくても
マーケッター次第では
それなりに売上は上げることができるということですね。
ということは逆に、
マーケッターの力が弱いと、
本当は内容が面白いのに全然ヒットしない。
という状況が起きたり、
大ヒットしているのに赤字を出す。
なんて現象も起きるわけです。
宮崎駿監督の「風立ちぬ」は大ヒットなのに赤字!?
「大ヒットして赤字出すって何??」
と思うかもしれませんが、
有名所で言うと、
宮崎駿監督の「風立ちぬ」という2013年に公開された作品。
これは宮崎駿監督の引退作ということで、
大ヒットしました。
興行収入は120億円を超えです。
興行収入120億円は2013年で最もヒットした映画です。
しかし、
この「風立ちぬ」という作品は
これだけ大ヒットしたのにも関わらず
結局ファーストランでは赤字に終わったそうです。
なんでこれだけヒットしているのに
赤字になったかと言うと、
マーケッターが数字の管理をしていなかったからでしょう。
まぁこの映画に関して言うと、
数字の管理が出来なかった。
というのが正しいかもしれませんね。
というのも、
宮崎駿監督は映画となると
惜しみなく映画製作にお金をかけるというスタイルであり、
資金管理すべきマーケッターがこれに対して立場上何も言えなかった
というのが理由です。
後に、この映画の製作インタビュー時に
『これはすごくお金がかかる作品だ。
でも、お金は錬金術で何とかしてくれるだろう』
という事を言った記事もありました。
映画ってどんな事にお金がかかるの??
では、
映画はお金がかかるなんて言われますが、
具体的にどんな事にお金を使っているかご存知ですか?
何となく頭の中で想像してみてください。
これ調べて見た時に驚きましたね。
予算管理項目でこんなにもあるのかと。。。
それを紹介すると(めちゃくちゃ多いです笑)、
文芸費
・企画・調査費
・脚本構成料
・監修料
・著作権料
・台本印刷費
演出費
・プロデューサー
・演出
・制作進行
出演費
・出演料
・解説料
ロケ費
・ロケハン費
・ロケ会場使用料
・制作協力謝礼
・出張宿泊料
・機材運搬費
・交通費
・打合費
・雑費
フィルム撮影費
・撮影技術料
・撮影助手料
・撮影機材費
・消耗品費
・特殊機材費
フィルム現像費
・ネガフィルム費
・ネガ現像料
・ラッシュ(現込)
・デュープ料
・サウンド料
・特殊技術料
・プリント料
・キネコ料
フィルム編集費
・編集技術料
・編集機材使用料
・仕上諸費
VTR撮影費
・撮影技術料
・撮影機材費
・特殊機材費
・転写料
・テープ料
・テレシネ料
VTR編集費
・編集技術料
・編集機材費
・テープ料
・編集仕上費
照明費
・照明技術料
・照明助手料
・照明機材費
音楽費
・音楽料
・著作権料
・レコード使用料
・選局効果料
録音費
・録音技術料
・録音機材費
・スタジオ費
・リーレコ料
・テープ料
・MAVダビング料
美術動画費
・大道具
・小道具
・メーク・コスチューム
・テロップタイトル
・スチール制作費
・動・線画料
・スタンド撮影料
スタジオ費
・スタジオ技術料
・スタジオ使用料
・VTR電編料
・転写料
・プレビュー料
・テープ料A
・テープ料B
外注費
・外注費
スポット料
・スポット料
支払手数料
・支払手数料
制作雑費
・交通費
・打合費
・雑費
P&A費
・広告宣伝費
・フィルムのプリント費
めちゃくちゃ多いですね。
実際にはこれ以上に項目が増えたりするでしょうね。
しかし、
邦画全体の1本辺りの平均制作費は
3.5億円だそうです。
これだけの項目があるのに、
1本あたり3.5億円しか使えないというのも
大変ですね。
ただ、
予算を気にしない宮崎駿監督は
「風立ちぬ」の人件費だけで20億円以上使ったそうです。
そりゃ、大ヒットしても赤字になる。
というのもちょっと納得ですね。
でも、それだけの強いこだわりがあるから、
大ヒットを生み出せるということもあるでしょう。
ちなみに、
ハリウッド映画は大きく予算をかけるなんて言いますが、
どのくらいかけるかと言うと、
日本換算すると100億円程度かけたりします。
なんで、
こんなにも大きくお金をかけて
映画製作出来るのかというと、
これも日本とハリウッドの
マーケティングの違いにあるのですが、
これについては別の機会にでも話します。
ヒット映画はどのくらい儲かるか計算してみて
ここまで読んで、
映画ってたくさんお金がかかるということは、
わかったと思うのですが、
それでは実際にどうやって
この巨額な資金調達をしているのでしょうか?
具体的な例を挙げながら
どやってお金を集めて、
どうやって利益として残るのか説明したと思います。
これから行う計算はかなりざっとした試算になります。
まず、
製作費5億円
興行収入10億円の映画を製作したとする。
そすると、観客動員数は約77万人。
計算は、10億円÷1300円=77万人になる。
映画館の一般入場料は1,800円ですが、
前売りや各種の割引を利用する人も多いので、
1人あたり1,300円と試算することが多いため、
1300円で計算になります。
興行収入10億円程度だと、
日本の邦画興行収入ランキング的には300位くらい。
「クレヨンしんちゃん」とか「NARUTO」とかの映画が
300位に沢山あった気がします。
だから興行収入10億円は
大ヒットでも無いし、コケてもない感じ。
上記を元に考えていくと、
まず映画を作るには5億円集めなければいけません。
5億円集めるには、「製作委員会」というものがあり、
ここに出資を募る形になります。
と言うよりも、
出資をすると製作委員会のメンバーになって
配分を受ける権利を得ることができます。
テレビ局なんてよく出資していますね。
出資側は、出資したパーセンテージによって
配給収入を得られるようになります。
つまり、
作費5億円の映画に10%出資した場合、
利益から10%を配給されるという仕組みです。
この製作委員会によって基本的には資金調達ができます。
しかし、1つだけ問題があります。
製作委員会が出すのは制作費5億円のみであり、
P&A費というフィルムのプリント費と
映画の宣伝費については自社負担なんですね。
つまり製作費5億円を集め、
自社でP&A費を用意しないといけないということです。
今回はP&A費を3億円と仮定しましょう。
まとめると、
製作費5億円(製作委員会100%負担した場合)
P&A費3億円(自社負担)
興行収入10億円
観客動員数約77万人
こんな感じですね。
興行収入は制作側と映画館で分けることになるので、
大雑把に言って、約半分を映画館が持っていきます。
なので、興行収入10億円で映画館と分けると
手元に残るのは5億円です。
もうこの時点でわかる通り、
赤字です。
この他の収入としては、
パンフレット収入があります。
一応計算に入れてみると、
観客77万人のうち全体の1割の7万7000人が
パンフレットを購入したとする。
1部600円計算で
600×77,000=約4600万円
です。
このパンフレット代の何割かは
もちろん映画館に渡します。
仮に、
パンフレット製作費+映画館に渡すお金を考慮して、
半分が利益になると考えると、
パンフレット収入は2300万円です。
なので、手元に残るのは5億2300万円。
まず、
ここで自社負担したP&A費3億円を差し引くと、
2億2300万円残ります。
しかし、この後
出資者に対して配給して行くわけですが、
今回の様に100%出資で映画を作成した場合、
配給は利益から出資パーセンテージを払うことになるので
映画製作側の利益が0になってしまうため、
配給手数料というものを映画製作側がとります。
今回のように100%出資で製作した
映画だととりあえずこの配給手数料が
製作側の儲けになります。
この配給手数料はケースバイケースなんですが、
今回は30%と仮定すると、
2億2300万円の30%なので、
6690万円が製作側の利益になります。
つまり、ここで損をするのは出資者達ですね。
出資社は利益からのパーセンテージなので、
10%だったら5000万円を出資して、
戻ってくるのが、
2億2300万円-6690万円(配給手数料)=1億5610万円
1億5610万円×10%(出資割合)=1561万円(配分)
1561万円(配分)- 5000万円(出資金)=-3439万円
となります。
かなり雑な試算になりますが、
そこそこのヒットだと
ファーストランでは出資側が赤字に終わるということです。
この後、
2次利用収入として
DVDやビデオ、キャラクター商品などが売れれば
そこの収入から出資者に還元していきます。
アニメ系なんかは映画が大きくヒットしなくても
キャラクター商品が売れやすいので
商品化してからの収入が大きいので
出資側も積極的に出資してくれたりします。
洋画で言えば『スターウォーズ』シリーズの
商品化権収入なんかはえげつない数字が出ていると思います。
他にもテレビでの放送権料とか
海外放映とかでも2次利用収入としてあるので、
そこそこのヒット映画は、
2次利用収入まで得て関わった人達が黒字になれる。
という形になります。
邦画はこの2次利用収入の得方が下手で
ハリウッドなんかはこのマーケティング戦略が上手いので
大きく売り上げるなんて違いもありますね。
なんか思っていたより、
映画って製作側も出資側も儲からないと思いません?
むしろ、出資側で考えると
かなりリスクが高いビジネスモデルにも思えますね。
だって、基本的にそこそこのヒットでは
興行収入時点では赤字で、
その後の2次利用収入でDVDとか、
グッズがしっかり売れれば黒字になるわけですから。
確率としては赤字になる可能性の方が高いですし。
でもこれが「君の名は。」の様に大ヒットしたら、
物凄いお金が入ってくることも想像できますね。
ちなみに「君の名は。」の製作費は
メディア見解によると7億円程度らしいです。
7億円の製作費で、
観客動員数1500万人
興行収入200億円
これで計算してみるととんでもないことになりますね。
今回の映画は出資者を募ったか
どうかまでは知りませんが、
仮に上記と同じように
製作委員会に100%出資してもらったと仮定みると。
映画製作側の取り分は概算で約31億円です(配給手数料30%計算)。
仮に10%の5000万円出資していれば、
約7億3000万円の配分を貰えます。
それで、この後にテレビやDVDやグッズ、海外放映の
2次利用収入が入ってくるので
とてもつもない金額の利益がでるということになりますね。
まぁ「君の名は。」なんて
興行収入2位の大ヒット映画なので
数年に1本の割合でしか実現しないので、
映画製作って苦労の割にリターンが少ないなと感じますよね。
出資する方なんて赤字かせいぜい少しの黒字程度なんで、
旨みのそんなにないなと。
一見物凄く稼げそうで
華やかにも見える映画の世界ですが、
今回映画について分析して改めて
大変な世界だなと感じました。